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【2006/03/29 12:06】 知的財産
 と言う訳で、残すところあと5時間弱。前年に提出したのを多少いじくった程度の内容しか書けず残念。
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「知的財産推進計画2006」の策定に向けた意見

1.再販売価格維持制度及び新聞・出版業に係る特殊指定は廃止すべきである


 独占禁止法第23条4項に基づく著作物――書籍・雑誌・新聞・レコード盤・音楽用カセットテープ・音楽用CD――再販価格維持制度に関して推進計画第4章1(4)で「消費者利益の向上を図る観点から、事業者による書籍・雑誌・音楽用CD 等における非再販品の発行流通の拡大及び価格設定の多様化に向けた取組を奨励する」と言及されているが、この項目には基本的に賛成する。但し、技術革新による代替手段の確立を始めとするや市場動向の変化を基に近い将来の制度廃止を前提とすることを明示すべきであると考える。
 音楽用CD等の商業用レコードに関しては著作権法による還流防止措置の施行を機に即時・無条件に制度を廃止すべきであり、本年2月のコンテンツ専門調査会報告書においても廃止の方針が明示されたことを受けて「直近の課題」と言う位置付けで推進計画上に廃止の方針とその時期を明記すべきと考える。なお、文化庁は「還流防止措置と再販制度は無関係」と言う見解であるが、日本の音楽用CDは還流防止措置の視野とされているアジア諸国と比較しての場合のみならず欧米先進国とヒットチャート上位曲について比較してもその小売価格が突出して高額であることはよく知られている。また、レコード会社が再販制度を前提にしたビジネスモデルに固執し続けていることが欧米で爆発的な人気を得ている「iTunes Music Store」のような低価格かつ利便性の高い音楽配信サービスの普及が日本において一向に進まない理由の一つになっている現状は本末転倒との謗りを免れないものである。これまで、再販制度により保護されていると考えられて来た民謡などの需要が少ないタイトルについてもインターネットを経由した音楽配信ならば製作から流通に至るまで低コストで実現可能なうえ全国どこでも利用可能であり、もはや音楽の供給手段としては音楽配信が現行のCD製造・販売に大きく取って代わるものとして確立される可能性は揺るぎ無いと言える。再販制度を維持すべき理由に挙げられる「文化の普及」と言う観点からは、技術革新により可能になった音楽配信サービスを阻害することの方にこそ問題が有るのは自明であり、少なくとも商業用レコードに関しては「世界唯一」の再販制度を維持する理由は完全に失われたと言うべきである。再販制度を擁護する意見の中には「インフラの未整備」などが挙げられているが、インフラの整備は政治の役割であり「未整備地域の解消」と言う政治の役割を棚上げしての擁護意見が政治家から出されることは極めて遺憾であると言わざるを得ず、猛省を促したい。中山信弘本部員が2月20日のコンテンツ専門調査会デジタルコンテンツ・ワーキンググループで述べた「レコードの再販につきましては、恐らくそういう制度をとっているのは、世界で日本だけだと思いますし、また、一昨年の著作権法改正で、いわゆるレコードの管理防止措置、つまり安いレコードが日本国内に入ってこないような措置を取りました。国内的には再販で価格を維持し、国際的な競争もしないという、世界でもまれに見る状態に置かれているわけであります。こういう状態が、果たして日本の文化を守るために必要なのかと、そんなに素晴らしい制度なら、なぜ世界がまねをしないのか。現在、本当に日本のレコード産業は、世界に冠たる産業になっているのか。世界一高いCDを買わされている日本のユーザーは、本当に世界一ハッピーなのか。そういうところから、私は考え直さなければいけないと思います。アメリカよりも産業規模が小さいわが国の音楽産業、それに対してレコード会社はアメリカの何倍もあるという、言わば過当競争の状態にあるわけです。この護送船団方式を維持していくためには、やはり再販制度は必要だろうと思うわけでありますけれども、しかし、再販制度を維持してやっているうちに、実はもう大きく流れが変わってきている。例えば、インターネットを通じた音楽の配信などのように、再販などには全く関係ない世界が出現しつつありますしたがって、再販制度で利益を得て、企業は現在はいいかもしれませんけれども、これに溺れて合理化をしないと、そのうち大きな崩壊が始まるのではないかと私は考えています。そして、この問題は、決して唐突に起きたのではないわけでして、もう何年も前から公取でさんざん議論しておりますし、独禁法学者あるいは産業構造論の経済学者の間でも、さんざん議論をし尽くしているわけであります。知的財産戦略会議の時代から、再販については直接書いてありませんけれども、競争政策が大事であるということは述べられておりますし、また知財基本法にも、競争法のことは書いてあるわけです。したがって、私は日本の音楽産業の合理化のために、むしろこの議論を始めるのは、遅過ぎるという感じすらするわけです」との見解は全くの至言であり、全面的に賛同する。
 他方、活字媒体に関しては現状では商業用レコードのような技術革新による代替的供給手段が確立されているかどうか疑義が残る点は否定し得ず、なお後考に待つべきであるが、出版業界に関しては音楽業界で昭和54年の全国レコード商組合連合会事件を契機に解禁されたポイントカードの発行にすら消極的であるなど運用が極めて硬直的であるばかりか、業界が「再販制度の盟友」と称して止まないドイツやフランスにおいてすら時限再販が採用されている事実にすら目を向けず、諸外国にも全く例が無い半永久的に小売価格を拘束する運用は、発売後相当期間を経過したタイトルの需要を逃し裁断処分が総印刷数の4割にものぼる「文化の墓場」とでも称すべき凄惨な現状を作り出している。この事実は、それまで「別の店に持って行けば売れる可能性が有り、その輸送費用を国民が均等に負担する為の制度」と説明されて来た再販制度の意義がほとんど有名無実化してしまっている現状を考えても「業界の自傷行為」であると言わざるを得ない。このような極度に硬直した運用を抜本的に是正することこそが図書館や古書市場、そしてその利用者を「読者は味方・消費者は敵」と視野狭窄極まり無いプロパガンダ的フレーズを並べ立てて弾劾するよりも遥かに業界、ひいては文化の発展に寄与するであろう。最後に付言するならば、定価より割り引いて書籍を販売する行為自体が著作者の名誉や信用を毀損するものではないことは平成13年8月29日の東京高等裁判所・平成13年(ネ)第147号損害賠償請求控訴事件判決においても認定されているところである。
 また、上記の観点より新聞等の特殊指定に関してももはや維持すべき理由は皆無であり、直ちに廃止すべきである。特殊指定及び再販制度の是非と宅配制度が密接不可分であると言う日本新聞協会の主張はミスリードそのものであり、半世紀以上にわたってほとんど変化の見られない前近代的なシステムを引きずり続けている現行の宅配制度に対する整理・合理化を進め「特殊指定及び再販制度に依存しない新しい宅配制度」の確立こそ推進すべきであると考える。
 そもそも、都市部か過疎地かを問わず過大な景品競争や事実上の値引きである「3ヶ月間無料」購読契約などが常態化している現状は、自ら「絶対護持」を叫んでいるはずの再販制度が既に足許から遵守されていないことの証明と言うより他は無く、そのような実態を無視して一種のプロパガンダ的に発せられ続ける「文化水準の平準化」「知る権利の保障」が建前にしか過ぎないことの証左でなく何だと言うのか。このように「既に守られていない」制度を護持しろと言う新聞業界の主張は全く意味不明であると評せざるを得ない。また「全国同一価格」を標榜する欺瞞性は同日に発行される東京本社版と西部本社版のページ数に格段の違いがあるにも関わらず同一価格であるが故に西部本社版の方がページ当たりの単価が高額である事実を見れば明白である。
 以上の理由により、再販制度及び特殊指定の廃止は急務であり、賛成意見を抹殺し、誹謗中傷する新聞・出版業界の「マスメディア全体主義」的態度を戒める為にも推進計画において「独占禁止法第23条の廃止を前提にした縮小」を、目標とする時期と共に明示すべきであると考える。


2. 独占禁止法第21条は直ちに廃止すべきである

 公正取引委員会は独占禁止法第21条の適用除外規定により法律の執行を躊躇している事実は無いとの見解であるが、筆者を含む一般国民の多くはこの見解に同意していない。さらに付言するならば、仮に独禁法第21条の存在により公正取引委員会が萎縮していなくとも法を執行される側である企業、ひいては業界の遵法精神欠如に本条の規定が与えている悪影響は計り知れないほど大きいと言わざるを得ない。その中でも「コンテンツ産業」と総称される業種に属する企業や団体は本条を「独禁法を遵守する義務そのものの免除規定」であるかのように解する傍若無人ぶりが顕著であり、最近の事例で言えば(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント事件(平成13年8月1日審判審決)がその典型例である。なお、本事件審決では被審人側の主張を「知的財産保護制度の趣旨を逸脱し、あるいは同制度の目的に反するものであることはいうまでもない」と全面的に斥けており、この一文を引くまでも無く「制度の目的に反するものであることはいうまでもない」推進計画第4章9(9)-2)ivが昨年の改訂に際して削除されたのは当然の対応であり、これを歓迎する。
 要するに「コンテンツ産業」と総称される業種が年々、底無しにエスカレートさせる業界権益拡大要望は「著作権を強化すればそれだけ独禁法の適用範囲が縮小される」と言う表裏一体の関係に基づき、通常ならば独禁法違反とされる行為を堂々と「著作権の行使」と称してやらせろと言っているに等しく、到底容認され得るものでは無い。何より、米国の反トラスト諸法にもEUの競争指令にもこのような執行機関を自縄自縛する規定は存在せず「知的財産権の行使」が主張される行為を含めて積極的に是正措置が執行されているのであり、本条を「独禁法を遵守する義務そのものの免除規定」であるかのような解釈に基づいた不公正取引行為が後を絶たない状況に対する執行力の確保を行うことが絶対に必要である。著作権の多くが任意規定であるのに対して独禁法は強行規定であり、本来ならば日本国内において経済活動を行う全ての者が遵守する義務を負うべき性質の法律であるにも関わらず、一部の業種に従事する者の間で「著作権を保有している」ことを以て法律を遵守する義務を全く免除される特権が与えられるかのように錯覚し、或いはその錯覚を現実にしようとしゃかりきに業界権益拡大を主張する姿勢が一般国民の多くから顰蹙を買っている現実を直視するよう、関係者各位に対して切に望むものである。そして、この悪弊と訣別する為に最も効果的な施策は独禁法第21条の廃止をおいて他に存在しないと考える。
 なお、今回の意見募集に際しても(社)コンピュータソフトウェア著作権協会を中心に「権利の消尽は絶対悪である」との讒言が提出されることが予想されるが、そのような讒言を再び採用することが無いよう重ねて要求する。2004年5月27日に当時の行政改革担当大臣が行った要求は、最近5年間の岐阜県公報に告示された内容に基づく限り大手ゲームメーカー・タイトーからの政治献金によるものであることは明白である。これは「政治とカネ」にまつわる問題そのものであり一旦、削除された項目を業界の讒言を受けて復活させることが「知財立国」の趣旨を「政治とカネ」によって歪曲する暴挙以外の何物でも無いことを併せて指摘するものである。

3. 誰でもアクセス可能なアーカイブ構築を一層、推進すべきである

 前年の推進計画改訂に伴い第4章7.「コンテンツのアーカイブ化に関する取組を奨励・支援する」が追記されたところであるが、本項で例示されている漫画・アニメ・映像・放送番組・文化遺産・歴史的公文書に文献及びコンピュータゲームを加えるべきであると考える。
 文献に関しては、現在「青空文庫」「プロジェクト杉田玄白」などの民間主導で行われているプロジェクトが存在するが、政府としてこれらの民間プロジェクトを評価し、支援する立場を明確にすることが求められる。また、コンピュータゲームに関しては2004年に東京都写真美術館で行われた展示会「レベルX」のような事例は存在し、国立国会図書館においても納本の対象とされているところであるが、ハードウェアの生産が既に終了し再生が困難になっている物も少なからず存在する。また、テープメディアやフロッピーディスクなどの時期的記録媒体及びCD-ROMやDVD-ROMなどの光学的記録媒体は記録面の損傷・腐蝕により必ずしも長期保存に適していないと言う問題点が有り、合法的なエミュレーション技術の開発支援や米国デジタル・ミレニアム著作権法の改正により追加された「再生手段が市場から失われた記録媒体の複製」に対する適用除外規定を著作権法に創設することなどを検討すべきである。
 また、既に例示されている物の具体策に関しては東京国立近代美術館フィルムセンター・国立国会図書館近代デジタルライブラリー・NHKアーカイブス等の各々、先行して実施されている事業であれば近代デジタルライブラリーの公開範囲を現在の明治期より大正〜昭和31年まで著作権保護期間の満了が確認可能な範囲で拡大することや新規に録音物(レコード盤)も公開対象とすること、英国・BBCが膨大な過去の放送資産をインターネット上で公開する計画を進めている事例などを参考にしつつNHKアーカイブスのインターネット公開を、特に著作権保護期間を満了した昭和31年以前の貴重なラジオ番組の録音について積極的に検討することなどを推進計画において新規に追加するよう希望する。
 1971年に米国で「Project Gutenberg」が始まって以来、膨大な量が今日まで残されている過去の文献は最初にデジタル化され、次にネットワーク化の恩恵により今日では誰でも自由にアクセスすることが可能となったが、単に文献がデジタル化されただけであればアーカイブ構築は限定的なものに留まっていたであろう。ネットワーク化により初めて、多くの人々がその恩恵に浴することが可能となったのであり、そのことは同時にベルヌ条約において「著作者の死後、法人の場合は公表後50年」を以て著作権保護期間を満了することに大きな文化的意義が存在することを人々に実感させたのである。しかしながら、推進計画では第2 章I-5(2)や第4 章4.(3) 1)など「欧米では著作者の死後もしくは公表後70年が標準であり日本もこれに合わせて全ての著作物について保護期間を延長すべきである」と言う「コンテンツ産業」と総称される業種ないしは米国政府の外圧をそのまま容認するが如き項目が存在している。著作権延長、さらにはこれが遡及適用されるならばそれはあらゆる分野におけるアーカイブ構築に対する最大の障害であり、その観点からこれに反対する。昨年、米国の外圧に屈する形で著作権を延長したオーストラリアでProject Gutenberg of Australia が事実上の活動休止状態に追い込まれた愚を「他山の石」とすることは有っても安易に追随することは厳に慎まなければならない。その理由は次項で詳しく述べる。
 また、政府・与党の一部で提案されている国立国会図書館の独立行政法人化には反対する。その理由は、国立国会図書館の納本制度は過去に一度も適用事例が無いとは言え罰則規定が設けられていることからも明らかな通り、我が国の出版物をその内容の善し悪しを問わず収集することによって我が国最大のアーカイブを構築すると共に、その蓄積を立法作業に役立てることを目的としている。独法化を主張する意見は近年の関西館・国際子ども図書館の開館を以て「肥大化」と貶めているが、そのように国会図書館を貶める前に自身が国会図書館を十二分に活用しているのか自省すべきであると考える。
 最後に、コンテンツには属さない「産業遺産」について述べる。2000年に成立し、本年4月1日より施行される電気用品安全法(PSE法)の対象とされる品目には、我が国の商工業発展を支えて来た貴重な「産業遺産」と言うべき品々や電子楽器類や映写機・テープレコーダー・ビデオテープレコーダー・レコードプレーヤーなどの録音・録画及び再生機器、ゲーム機器などの我が国における近現代の文化史上、極めて大きな意義を有する品々も含まれており、PSE法の施行に伴い2001年以前に生産されたPSEマークの無いこれらの電気用品が商品価値を失い、散逸の危機に瀕していることに対して一般国民の間で反発が起きている。かかる混乱の一因は、PSE法の改正に至る議論に際して「産業遺産」と言う概念が欠落していたことと無関係ではなく、今回の混乱を教訓として次世代の商工業発展に寄与する「産業遺産の保全と継承」が知的財産戦略の重要な柱であることを政府として認識すると共に、推進計画に明記すべきであると考える。

4.著作権保護期間の延長に断固反対する

 米国で争われたいわゆる「ミッキーマウス延命法」訴訟を巡る議論において焦点となったのはミッキーマウスに代表される毎年、膨大な点数が公開される著作物の中でほんの一握りにしか過ぎない長期間にわたり、高い商業的価値を有する著作物を「延命」する為に同時期の人々から忘れ去られた圧倒的多数の著作物が日の目を見る機会を失うと言う問題である。そして、一昨年に他の業種より先駆けて延長を実現させた映画業界を始めとしてこの問題に対して正面から真剣に取り組んでいる業界は全く存在しておらず、こうしている間にも映画会社の倉庫では膨大な量のフィルムが「商業的価値が無い」と言う理由だけで死蔵され続けている。著作権保護期間を満了し、公有となった著作物に誰でもアクセスすることが可能となれば、現代の感性で新しい作品が生み出されるかも知れないのに著作権がごく少数の長期間にわたり高い商業的価値を有する著作物の為だけに延長され続ける限り、その機会は巡って来なくなってしまう。これまでに世界中で「西遊記」や「ドン・キホーテ」から発想を得てどれほど多くの二次創作が行われたことか。呉承恩やセルバンテスの著作権が現在も続いていたらそれらは――例えば「ドラゴンボール」なども――全く存在を許されていないであろう。ディズニーとて例外では無くグリム兄弟やアンデルセンの童話を二次創作によりアニメーション化しているし、ミッキーマウスが初登場した映画「蒸気船ウィリー」も当時流行していたバスター・キートン主演の映画「蒸気船ビル」のパロディである。このように、ごく少数の長期間にわたり、高い商業的価値を有する著作物を保有している著作権者――それは法人である場合が多い――を優遇する為だけに著作権保護期間を一律、無条件で延長することの害は後で取り返すことが出来ないほど大きいと言うことをL.Lessigスタンフォード大学教授は著書『FREE CULTURE』(日本語版・翔泳社刊)で述べている。また、日本国内でも横山久芳・学習院大学助教授が一昨年5月に論文「著作権の保護期間延長立法と表現の自由に関する一考察−アメリカのCTEA 憲法訴訟を素材として−」(学習院大学法学会雑誌39巻2号)を公表している。2004年10月に文化庁が実施したパブリックコメントでは、音楽業界を中心に21団体から著作権及び著作隣接権の延長要望が出されたのに対し一般の賛成意見はほぼ皆無であった。一昨年、映画著作物に関してのみ延長を実施した際の著作権分科会報告書でも全ての分野における延長には否定的な見解が示されていたのだから一般のこうした反応は当然に予想され得ることであるが、それにも関わらず著作権分科会は著作権延長を前提にした議論を強引に進めようとしている。これは「朝令暮改」との批判を避けられないものであるばかりか、延長を要望する業界や文化庁が「国際的傾向」と称している欧米における昨今の動向すら見誤っていると言う点でも全く不当なものと言わざるを得ない。2004年7月19日、欧州委員会(EC)は「COMMISSION STAFF WORKING PAPER on the review of the EC legal framework in the field of copyright and related rights」の10〜11 ページ「2.2.3.1. Duration of related rights」で、商業用レコードの著作隣接権保護期間に関してEU域内の音楽産業や米国政府からの延長要望を払い除ける形で「現行の“発行後50 年”以上に延長すべきではない」と答申している。この答申は著作隣接権に関する内容であるが、そこで述べられている理由(「延長すれば、ごく少数のベストセラーによって売り上げを確保する傾向に拍車がかかり、新しい作品の録音や、新たなる投資への意欲を減ずることになる」「アメリカを例外として、ほとんどすべての先進国は、著作隣接権の保護期間を50年としている」「EUにおける世論や政治状況は、保護期間の延長を支持していないと思われる。さらに、保護期間の短縮を求める声も存在する」)は、その大半が著作権に対しても当てはまるものである。また、2003年1月のミッキーマウス延命法合憲判決を受けて日本を含む他国に「死後70年・公表後95年」への延長を強く迫り、オーストラリアでは民間アーカイブ事業であるProject Gutenberg of Australiaを事実上の活動停止に追い込んだ米国でも変化が生じ始めている。米国議会図書館著作権局は「Orphan Works(孤児作品)」と題したパブリックコメントを募集し、著作権者、或いは継承者が不在もしくは所在不明となっている作品の取り扱いに関する意見を求めると共に、公聴会を昨年夏までに二度開催している。
 存在する著作物の中ではほんの一握りにしか過ぎない長期間にわたり高い商業的価値を有する著作物の為だけに延長を要望している業界や文化庁、著作権分科会委員の中にこの「Orphan Works」がベルヌ条約に定められた最低限の期間内に在る作品においてすら大量発生している問題に注意を払っている真の意味での「識者」が現れなければ、政策判断の失敗によって大量の「Orphan Works」が人為的に発生することは不可避である。日本国内で発生している「Orphan Works」の一例を挙げると、国立国会図書館近代デジタルライブラリーでは毎年「著作者情報公開調査」を実施しているが平成16年度の調査対象であった約1500名の内、没年判明は約3分の1である532名、このうち480名は既に死後50年を経過し、52名はまだ著作権保護期間内であることが判明した。さらに、遺族等の権利継承者の所在は約4%の60名しか確認出来なかったと言うことである。仮に著作権保護期間が一律無条件で延長されたら、これらの数値はさらに低くなるのが確実である。
 以上の理由により、この「Orphan Works」の問題を解決する有効な手段を確立する目処が全く立たない状況での著作権保護期間延長はアーカイブ構築の阻害要因となるばかりで無く現在ならば不要である文化庁長官裁定を仰ぐ状況を全くその必要性が認められないにも関わらず増加させるなど著作権法の目的である「文化の発展」にとって有害無益であり絶対に認められない。そんなに延長を是とするのであれば、商業的価値を有する著作物だけ登録制にでもすれば良いではないか。ミッキーマウス延命法訴訟において敗訴したE.Eldredはベルヌ条約上の義務である「著作者の死後、もしくは法人による公表後50 年」を過ぎてなお延長を希望する場合は1ドル程度の手数料を課し、50年に前後する3年間この手数料を完納することにより確実に意思表示を行った著作者ないし権利継承者に対してのみ延長を認めると言う方法を提案し、実際に米国下院へこの提案を基にした法案が提出された。翻って、日本でも2003年に他の分野に先んじて著作権延長が実施された映画著作物でこの方法を採用し、ベルヌ条約上の義務を超える「プレミアム」の20年はこの方式により認めるよう改めることを検討すべきであると考えるが、それが現実的でないとしても1953年から1972年にかけて公開された映画作品・放送番組のうちどの程度が現在もアクセス可能であるか、特に映画作品に関しては映画会社に対して当該期間内のフィルムがどの程度「死蔵」されているかを検証すべきである。その結果、公開後50年以上を経た現在でもなお商業的価値を有志続けている作品の収益がフィルムの「死蔵」による保管コストを下回るようであれば、2003年の著作権延長は立法趣旨に反した運用が為されていると断じざるを得ない。
 なお、著作権分科会において延長と並行して審議される予定となっている連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律の廃止には、賛成する。

5. 著作権法に「動画著作物」の定義を新設し、頒布権の名称を「興行配給権」に改めるべきである

 現行著作権法における「映画著作物」には頒布権(第26条)・保護期間のプレミアム(第54条)など様々な特権が認められており、それ故に「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現」されている著作物が新規に登場するたびに「映画著作物」の定義が拡大解釈され続けていると言う問題が生じている。その一方、現行の「映画著作物」の定義では「物に固定されている」ことも要件とされているが、昨今では技術革新によって「物に固定」されていない「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現」されている著作物――FLASH ムービーなど――が登場している。また、映画著作物の権利は第16条によって主に出資者たる法人に帰属することとなっているが「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現」される著作物は従来のように法人が多額の費用を投じなければ製作不可能と言う訳ではなく年々、技術革新によって少人数ないし個人が低コストでこれを創作することも可能になっており、その中には個人がインターネット上で公開していた作品がテレビ放映されるケースなども出始めている。こうした現状に現行著作権法第2条3項の「映画著作物」の定義が合致しなくなっているのは明らかである一方、個人に対して現行法の「映画著作物」に与えられている様々な特権を認める形での解釈変更はそれらの特権が与えられた理由と齟齬をきたすものであり、問題が大きい。また、これまで昭和59年9月28日の東京地方裁判所・昭和56年(ワ)第8371号損害賠償請求事件判決を契機に映画著作物と完全にイコールの存在であるかのように喧伝され続けて来たビデオゲームの場合でも、平成11年3月18日の東京高等裁判所・平成7年(ネ)第3344号著作者人格権侵害差止請求事件控訴審判決において『本件著作物は、いわゆるシミュレーションソフトの分野に属するゲームソフトであり、ユーザーの思考の積重ねに主眼があるものということができ、そのプログラムによって表されるディスプレイ上の影像の流れを楽しむことに主眼をもっているものでない……本件ゲームにおいては、ユーザーがシミュレーションにより思考を練っている間は、静止画の画面構成の前で思考に専念できるよう配慮されている……以上の事実関係からみれば、本件ゲームは、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているものとは認められず、本件著作物が、映画ないしこれに類する著作物に該当するということはできない』と判示されたケースが存在し、この時点で旧来のようなビデオゲーム全般が「映画著作物」と完全にイコールの関係であるかのように喧伝され続けて来た学説は破綻したと言うべきである。また、平成11年の著作権法改正によりそれまで頒布権とセットになっていた上映権が分離されたことで静止画像でも上映権を主張することが可能になるなど昭和59年当時と比較すれば「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現」されている著作物を拡大解釈させる必要性は乏しくなっている。以上の理由により、現行法の「映画著作物」の定義を拡大解釈するのではなく言語・美術・音楽など他の著作物と同等の「動画著作物」の定義を新設すべきであると考える。当然ながらこの「動画著作物」は少人数ないし個人が低コストでこれを創作することが可能である以上、現行法の「映画著作物」で認められている様々な特権は認めないものとする一方、その保護期間については公表年でなく個人の死亡年を起算点とすることでも言語・美術・音楽など他の著作物との平仄を合わせる。そして「映画著作物」は新設する「動画著作物」のうち「劇場等の施設において公衆に上映するもの」のみにその範囲を限定し、現行法上の様々な特権もこの限定された範囲内において認める。その際、第26条の頒布権は後年、平成14年4月25日の最高裁判所第一小法廷判決により決着を見るまで長らく論争の火種となった反省も込めて昭和45年当時の立法趣旨により忠実な「興行配給権」と言う表現に改め、恣意的な拡大解釈の余地を無くす必要が有る。

6.「世界最強」と揶揄されるほどに厳格な同一性保持権を緩和すべきである

 2004年12月16日の第9回本部会合において中山信弘本部員もその必要性を述べている通り、現行著作権法における著作者人格権、特に同一性保持権は最近の相次ぐ厳格に過ぎる司法判断により「世界最強」とまで揶揄されるに至っており、ベルヌ条約において許容されている公開を前提にしない閉鎖領域内での著作物(美術品等の原作品は含まない)の改変や著作者の名誉声望を害しない形での改変までもが、それにより保護される法益が不明であるにも関わらず禁止されると言う諸外国と比べて極めて不合理な状況に陥っている。このままでは表現の自由を脅かす恐れも大きく、ベルヌ条約上の許容範囲まで緩和するよう希望する。
 他方、オンラインゲームにおける改変行為は「閉鎖領域」内に該当しないことは言うまでも無く、サービス提供事業者の利益及び信用を毀損する行為であり不正競争防止法の適用も視野に対策を検討すべきであると考える。

7.著作権法においてフェアユース規定を明文化すべきである

 従来、米国著作権法第107条(a)項に代表される一般公正使用、いわゆるフェアユース規定は著作権法第1条に「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ」と有る条文を根拠に現行法でもフェアユース的解釈を取り得るとするものか、或いは日本がいわゆる「成文法主義」であることから概念そのものを否定するいずれかの学説が提唱されて来たが昨今の裁判例はことごとく後者の説に傾いており、今や「フェアユース」を持ち出した側が必ず負けると言うような状況に陥っている。しかしながら、著作権法の目的は「文化の発展に寄与」することでありこの目的を達成する為にフェアユース的解釈を採り入れることが必要な場面でも将来にわたっても延々とフェアユース的解釈に基づく法の運用が否定され続けるならば、著作権法はその目的を永遠に達成し得ないと言うことになってしまう。よって、フェアユース規定を明文で定めるべきであると考える。なお、いわゆる「成文法主義」説では現行の第30〜49条に列挙されている適用除外規定とフェアユース規定は全く相容れないかのように主張されているが、諸外国の立法例を見ても個別の適用除外規定と一般公正使用規定が共存している事例は少なからず存在しており、この主張は当たらない。よって、フェアユース規定を創設する場合でも、現行の第30〜49条は将来的な整理・統合を視野に入れつつそのまま残存させることが望ましい。但し、第38条については「営利・非営利」ないし「金銭の授受の有無」と言った外形的な条件ではなく「学術・教育」「福祉」と言った目的別の適用除外規定にすべきである。

8.障碍者の情報アクセス機会確保・拡大に関する項目を設けるべきである

 現行の推進計画には障碍者の情報アクセス機会確保ないし拡大に関する言及が存在しないが、障害者基本計画では第7章「情報・コミュニケーション」(2)c.「情報提供の充実」で「点字図書、字幕付きビデオ等、視聴覚障害者への情報提供サービスの充実を図るとともに、公共サービスにおいては、点字、録音物等による広報の促進を図る。また、字幕付きビデオ作成に係る著作権の運用改善を図る」とされており、これに対応させると共に一層の拡充を図るべく直ちに「障碍者の情報アクセス機会確保・拡大」を追加すべきである。
 著作権法が「隠れ欠格条項」的に機能し、障碍者の情報アクセス機会が奪われていると言う問題点はかねてから指摘されているが、その確保・拡大に必要な法律や環境の整備は本年1月の文化審議会著作権分科会報告書で提言されたにも関わらず、今国会への法案提出が見送られたことにより一向に前進する気配が無い。例えば、点字情報に関しては第37条で公衆送信権が制限されているが録音に関しては明記されておらず、社会福祉法人日本点字図書館では著作権者に対して個別に録音図書の公衆送信許諾申請を行っている。また、録音図書の作成は第37条3項により「点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設」においては認められているが、米国著作権法のいわゆる「Chafee条項」等を参考に、文化庁長官の認可を受けたNPO法人等にも録音図書の作成を認めるよう改正することが望ましいのではないか。聴覚障碍者向けにビデオへ字幕を添付する作業や要約筆記に関しても同様である。

9.「青少年保護」目的と称する包括的表現規制を意図した項目は削除すべきである

 第4章I(2)4 ii)及び(4) i)が「青少年の保護」を大義名分に掲げる表現規制を意図したものであると言う批判が生じていることに留意すべきである。2004年に成立したコンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律は第6条2項の「青少年等に及ぼす影響について十分配慮する」義務規定を理由に一部で「コンテンツ健全化法」と別称されているが、例えば体制批判的な内容を含む作品が公的機関により「青少年に有害な影響を与えている」と喧伝される状況がこの条文によって発生しないと言えるのか。事業者間で自主的に取り組むと言う条件の許でのレーティング及びゾーニングに関しては必ずしも反対するものでは無いが表現の自由が憲法で保障されている以上、何かしらの描写を法的に禁止することには実在する人の人権侵害防止など表現の自由に優越させるべき根拠が必要であり「青少年の保護」は、その根拠として余りにも曖昧かつ抽象的であると言わざるを得ない。そもそも、この条文の「青少年等に及ぼす影響」は定義が全く不明瞭であり、性表現や暴力表現のみを念頭に置いたものではなく体制批判的な内容を含む作品を公的に排除する意図が疑われるものと言わざるを得ない。よって、この項目は青少年が多様な体験を重ねることにより自身で「考える力」を養う機会を奪うことに繋がる表現規制を意図したものと疑われる現在の文面に問題が無いかどうか、改めて見直すべきである。
 また、本項目が根拠にしているとおぼしき環境犯罪誘因説は学界内で明確に否定されていることも併せて付言する。

10.商業用レコードの還流防止措置は早期に廃止すべきである

 推進計画に基づき204年6月3日に成立した著作権法の一部を改正する法律における商業用レコードの還流防止措置に対して多数の音楽ファン及びアーティスト・評論家ら音楽業界関係者による大規模な反対運動が巻き起こり、衆議院に33027名分の反対署名が提出されたのみならず複数の新聞社説でも批判的に取り上げられたところであるが、成立後に文化庁が実施した政令において定める年数のパブリックコメントでも文化庁は大多数の意見を無視する欺瞞的態度を取り続けている。これとは別に、著作権法改正要望に関して行われたパブリックコメントでは還流防止措置の縮小に関する要望が複数の企業・団体より出され、これに賛成する意見が全143項目中の1〜5位を占めるなど、依然として還流防止措置とその運用に対する不信感は根強く残っているものと言わざるを得ない。法案が国会に提出されるまでに、文化庁による恣意的な反対意見の排除や国際条約による「内外無差別原則」と言う不可避のリスクに対する一般消費者への情報開示が不十分であったばかりか業界及び文化庁が終始ごまかしとリスクの過小評価のみに徹した欺瞞的な姿勢を取り続けたこと、日本経団連が合意に際して求めた「時限立法」と言う条件を文化庁及び(社)日本レコード協会が反故にしたこと、著作権分科会において日本レコード協会より提出された三菱総合研究所及び文化科学研究所によるデータが極めて信憑性の疑わしいものであること――特に、三菱総研のデータは分科会で委員に配布された「要約版」とは別の「完全版」が存在することが法案提出後に明らかになっている――など、おおよそまともな手続きに則っていないものを法案にしたのであるから一般国民の理解が得られないのは当然である。2004年の推進計画見直しに対するパブリックコメントで還流防止措置に対する反対意見が全体の8割以上を占めたことを受けて「施行後の見直し」が追記されたことは評価するが、三菱総研データの需要予測が達成不可能であると判断された場合や日本国外のレコード会社(日本に現地法人を設置しているレコード会社を含む)が輸入阻害的行動を取っている事実が認められた場合は、日本レコード協会が2004年6月末に新聞各紙で「万一欧米から洋楽CDの輸入が阻害される場合には、還流防止措置の廃止もやむを得ないと考えています」と表明したことを受けて直ちに還流防止措置を廃止すべきである。
 なお、ソニー・ミュージックエンタテインメントや東芝EMIなど大手レコード会社の一部は既に前述の表明を反故にし、洋楽ベスト盤の輸入禁止申請を行っている事実が有ることもここで併せて指摘する。このような状態が続くのであれば、レコード会社の「公約違反」は明白であり還流防止措置は直ちに廃止すべきである。

 以上
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